私の住む七尾市は
古くから海産物の港として栄えてきた町で
今でも江戸時代や大正時代に建てられた家や倉庫が、ポツンポツンと残っているのですが‥
「妻よ!
我が会社の水産加工工場は築百年!
だましだまし使って来たが、柱も土台も腐って今にも崩れ落ちそうな有り様‥ 」
「そなた、何処かに腕の良くて安い工務店を知らぬか?」
「七尾市には工務店も沢山ありますけど、
それだけのお仕事を2~30万円の予算で請けてくれるところは、多分 無いと思いますね‥」
「うむ‥ 確かに そなたの言う通りだな。
それでは個人の大工ならどうだろう?
柱や土台の修理、腰壁の修繕、棚の作り替えまで やってくれそうな人物と言えば‥」
「白井大工さん‥
【七尾市 大工】とGoogleで検索すると出てくる
白井大工さんはどうでしょうね‥ 」
初めまして。白井大工です。
柱、土台の交換と腰壁の修繕と棚のやり換え工事ですね?
予算が25万円前後と伺っていますので、本来水産加工工場なら「ステンレス板」を腰壁に張りたいのですけど
予算的にそれは無理という事になるのですが‥
白井大工さん‥
見ての通りこの工場は大正時代に建てられた倉庫を無理やり水産物の加工場に使ってきた建物‥
直すよりも建て替えるべきなのだが、あいにくの新型コロナで私らの商売も元気が無い。
わずかな予算で申し訳ないのだが、向こう10年程度使えるくらいに直せないものだろうか?
そうですね‥
この建物は3尺(90cm)おきに柱が建てられている低い2階建ての建物なので、柱の根の部分だけの交換でも大きな地震さえ来なければ大丈夫だと思います。
本来は 土台の上に柱を乗せるのですけど、その為には建物の胴差しを何本ものサポートでジャッキアップする必要があるのですが‥
今回はそれが出来ないので、柱を一本ずつだましだましコンクリートの基礎から建てる方法にします。
つまり柱や土台の交換は何とかなりそうだが‥
腰壁に何を張れば良いのか?というのがネックのようだな?
そうなんです‥
今回は土台も柱も腐りにくい「桧(ひのき)」を使うので、普通の建築ならば心配なんかしないんですけど
ここは水をジャバジャバと使う環境なので
腰壁に相当耐水性のある素材を使わなければ、腰壁も土台も柱も 直ぐに腐ってしまいますよね‥
ステンレスが無理ならクッションフロアーを張るのもひとつのやり方ですけど、魚の内臓なんかが付着して擦り洗いするとどうなるのか‥
ケーカル板に高耐久なペンキを塗るのはどうなるのか‥
よく分からないので、後でペンキの問屋さんで、何か良いものが無いか聞いてみますね(笑)。
なるほど、分かりました。
それでは白井大工さん、後は宜しくお願い致します。
ポリカーボネート製の「プラ段」と、ボロボロになっていた「ケーカル板」をはがすと、腐った柱や土台とベニヤ板の姿が見えてきた‥
まだ形が あるように見えるけど、
手で くじるだけで土台は跡形も無く崩れていく‥
とにかくサポートとジャッキを使える所から、柱を交換していく!
柱を腐ってない所で、丸ノコで水平にぶった切る!
もちろん柱は太いので、丸ノコだけじゃこちらから半分までしか切られない!
外部は下見板が張ってあるけど、それを痛めないように内部から手ノコで切る!
切り取ったら、新しい柱と交換‥
ほんの40cm程度に切った柱の底に
硬質プラスチック製のパッキンを取り付た状態で‥
カケヤで少しずつ叩いて入れていく‥
(勿論、柱が乗る基礎面もコンクリート用のオフセット砥石とレーザーレベルで水平面に削り直しておきます)
(ディスクグラインダーにねじ込むだけで取り付け可能で、オフセットタイプだから水平研磨が可能な商品ですっщ(゜▽゜щ)!)
(更にこちらは一回り大きい125mmタイプながら、100mmディスクグラインダーに取り付け可能の10mmネジタイプです!お勧め!)
改修工事範囲の5間半(約10メートル)の中に交換するべき柱が9本!
ジャッキアップ出来る箇所は僅かに3ヶ所しかなくて、だましだまし交換していくしか無い!
柱を交換したら、その間に桧のたる木か間柱を土台の替わりに入れていき‥
更に柱と柱の間に「間柱」を建てていく。
もちろん端から端まで、レーザーレベルで通りと垂直を確認しながら。
壁の下地として、幅60mm厚さ30mmのエゾマツの下地材を使用した。
この材が土台や柱を繋ぐ役割を担って、柱の横ずれに少しでも力になればと願いながら固定する。
下地の次は「コンパネ」を張るんだけど
コンクリートの基礎に少し被る様に「コンパネ」を張れば、桧の土台は水害から免れる。
その継ぎ手が弱点にならないように下地と下地の間の縦にも下地を追加!
うん、ここまでは想定内だから順調順調(笑)!
後は耐水性が必要な腰壁をどうやるかだけど‥
「はぁ‥
水産加工工場の腰壁をどうすれば良い?って事ですかぁ‥」
ええ、ペンキの問屋のこちらなら何か良いアイデアが頂けるかと思って‥
う~ん、腰板にケイカル板にペンキ塗った程度じゃ無理ですって!
どうせデッキブラシなんかで擦り洗いするような感じでしょ?
無理無理!絶対無理!すぐにダメになる!
本来ならステンレス板!
それが無理ならアクリル板!
それでも予算で無理なら「FRP防水」だな!
「FRP防水」なら安く出来るんですか?
いやいや、プロに任せればクオリティーは高いが値段も高くなる(6000円前後/1㎡)。
だけど、あんたがするなら「FRP」の材料代プラス手間だから、クオリティーさえ我慢すれば少しは安く済むって話だ。
「FRP」のガラスマットはメートルでたったの500円。
10mの現場なら5000円だ(床なら二重張りで倍になるが)。
ガラスマットにFRP樹脂が2㎡辺り1リットルは必要だから、捨て塗りと色付けの仕上げ塗りの分を足したら10リットルは必要だな。
しかし、FRP樹脂は(冬用)、(春秋用)、(夏用)ってのがあって気温に合わせた物を使わないといかんし、
混ぜる「硬化剤」も1~2%と決まっているが、気温と経験の中で管理しないと、発火の恐れもあるっ!!
は、発火するんですか!?
100℃くらいなら簡単に上がるし、煙も上がる。
まぁ、ちゃんとやりゃ問題ないがな。
今回は一斗缶より、小分けなリゴラック4リットル缶(冬用)を3つ(5500円/1缶)買うのがいいだろな。
硬化剤のパーメック(100g)は千円程度、ローラーに脱泡ローラー、着色料トナーが6000円程度にアセトン(強力シンナー)も要る。
確かに「FRP」なら船のボディにも使われるくらいに強度も高いから間違いないですね‥
因みに全部で幾らになりますか?
「ちょうど32800円です。」
「わっ!」
「ちょうど32800円です‥ 」
(ちょ‥ちょうどなの?)
腰壁に耐水性のあるコンパネを張って‥
コンパネの下端に水害から保護する意味でコンクリートの角を造る「メンザン」を両面テープで張り‥
それも丸ごと「FRP」で固める事にする。
ひとすくい500ccの大きなお玉で「FRP樹脂」を計量して
園芸コーナーで見つけた5ccのスポイトで、きっちり1%の硬化剤を計り入れる。
取り敢えず1リットル作って1分間ちゃんと混ぜてから塗ってみる
ローラーのナットがちゃんと締めてなかったので、コロコロと外れて転がっていっちゃった(笑)!
捨て塗りで5㎡/1リットルくらいかな?
まぁ、次はガラスマットを張り付けなきゃ‥
タッカーで、仮止めしながら張って‥
FRP樹脂を塗った後にタッカー針を抜く事に(錆びて赤くならないように)。
余分なマットはハサミでカットして‥
FRP樹脂を塗って‥
確かに2mで1リットルくらい吸い込んでしまうから、液の合成が忙しい(汗)!
しかも塗ったら‥
ガラスマットが透けて、本当にマットを張ったのかщ(゜▽゜щ)!?って言われそう!
白く着色したいのはお客さんの希望だから、カラートナーを説明書通りに5%入れて塗ってみるけど‥
あれま?
よく見ると、何だかムラだらけの水墨画みたいになっちゃった‥
ちくしょう!失敗だ!
カラートナーも硬化剤も少なかったんだ!トナーは10%入れて、硬化剤はびびらずに2%入れれば良かったんだ!!
(まぁ、プロの半額程度だからというのと
「直ぐにFRP防水工事して欲しい!」
って言っても、何処の業者さんも相手にしてくれないでしょうから、これはこれで時間も予算も無いので諦める事に‥(冷や汗))
白井大工さん、充分ですよ(笑)。
どうせお魚のはらわたなんかで汚れまくるんですから!
ぐっ‥!すみません、説明書の通りに施工したのですけど‥
やはり経験の無さからですね‥申し訳ありません!
次は新しい棚を造らせて貰います!
これまで、土間から直接に建てた柱に棚を造っていたが、水場ではやはり腐ってしまうので
下から支える必要の無い持ち出し方式の棚を造る事に‥
(ポールに取り付けてある水平を確認するレーザーレベルと、垂直を確認するレーザーレベルの2基体勢で行った。やはりレーザーレベルが2台あると仕事がやり易い(´Д`)!)
(このレーザーは過去にブログに書きましたけど、本当に良い商品ですね~(´Д`)❤️)
たる木で組んだ骨組みに、正面だけ化粧材を取り付けて コンパネを両側はから張り付けて強度を持たせて‥
お客様の指定した高さで棚板を設置。
仕上げに元々あった水道蛇口を棚の真ん中の化粧材に取り付けて(ついでに蛇口を新品にして)完成。
元々あった蛇口や水道管たちが、何気に仕事をやりにくくしてくれてたけど‥
ホワイトボードや電話の取り付けてたボロボロの壁も予算内で直せたから、良かった。
それにしても廃材処分費に40000円もかかっているのが、辛いよなぁ‥
昔の倍だもんなぁ。コンテナボックス1箱が55000円(税込)もするんだから、どうしても工事費が高くなるんだよなぁ‥
いやいや、白井大工さん‥さすがはプロの仕事だ。
工場で働くお姉さん方達もとても喜んでいたよ!
私の感想も
この一言に尽きるっ!
「旨いっ!」
ってね(笑)!
【※ブログ中に使われた画像について】
お客様のご厚意から、「まぁ、うちの悪口みたいなのが無ければ使っていいよ~」との事で、撮影許可と使用許可を頂きました。
このエントリーがほんの少しでも若い大工さんの参考になれば嬉しく思います。
[鬼滅の刃](以下、Wikipediaより)
(当ブログ管理人はWikipediaに毎月寄付をする契約を結んでいます)
【因みに工事費の内訳‥】
大工の木工料として‥
解体工事(9000円)、土台と柱の交換(27000円)、土台、間柱や下地の取り付け(18000円)、FRP施工(18000円)、掲示板取り付けスペース改修や棚の制作(36000円)、ペンキ塗りや土間のコンクリート補修、蛇口の交換等の雑仕事(9000円)
材料費として
FRP(32800円)、材木費(約62000円)
廃材処分費(40000円)
合計が、 ちょうど 251800円になりました‥(´Д`)(笑)
(産廃のコンテナボックス)