「大工が、余計なことをお客さんに言うんじゃないよ!そんなのは段取りやり替えって言うんだから、いいんだよ!」
朝一番にかかってきた電話でした…。
「すみません、Kさん…。ただ、やはり説明しておかないといけないと思ったので…」
「ふんっ!そんなのは監督に言わせればいいんだっ!あんたが下手もたと言うな!」
ガチャン!!
朝からこんな電話がかかってくると、お仕事やる気も無くなるのですけど…
この現場は工期の無い事で有名な、大工さんに敬遠される〇〇リフォーム(仮名)さんの現場。
お仕事の手を止める訳にはいかないので、簡単な事をしながら(この時はお掃除)、ウギャーッとなった頭の中を整理してみました。
この現場に入って約一週間…。
台所、お風呂に脱衣場、トイレに廊下を解体して…台所の床を捨て張りまで施工したところでK さんが言ってきたのでした。
「白井さん…。この現場を一旦3日程離れて、もうひとつの現場をお願いしたい。」
「え…?」
「な~に、問題は無い。あんたが居ない間に、設備屋さんと電気屋さんがここの現場に入ってきて、仕事をするから丁度いいんだよ。」
「なるほど…分かりました。Kさん、3日間ですね?」
私はそれも有りだなと、返事しました。
でも後になって(待てよ…いくらなんでもお客様には説明してあるんだろな?)と、思ったのです。
で、朝に現場を訪れた元請けの「〇〇リフォーム」の監督さんに私は聞きました。
「すみませ~ん…監督さん! 今度3日程のリフォームがあるからって、その現場に行くようにK さんに言われたのですが…。」
「ええっ!?あの現場、白井さんが入るんですか?Kさんって、そんな段取りする人なんですか!?」
「はい…まぁ、3日なんですよね?」
「いえ…解体に2日、大工工事に4日みています。」
「!? なんだ…それじゃ殆ど一週間じゃねえか…?」
まずいな…。Kさんの相変わらずの「なんとかなる病」だ。
大工が確保出来ないなら、仕事を断ればいいのに…。
さすが…Kさんだわ。(〇〇公国の伯爵か?)
パニクッたのか、元請けの「〇〇リフォーム」の監督さんはその事を全くお客様に説明せずに、帰ってしまいました…。
「お早うございま~す!!」
入れ替わりにやって来たのが「電気屋さん」。
「すみません、電気屋です~!」
この声にお客様が居間から出てきました。
「あら、今日は電気屋さんも来られたのね?宜しくお願いしますね。」
「そ、それが奥さん…そして大工さんも。ちょっと2日ほど忙しくて来られないんです…その事を伝えに来たんです…。」
「あら そうなの?」
申し訳なさそうな電気屋さんでした。
「 あ、あの…それでしたら自分、明後日からしばらく別の現場に行くように言われてますから…その間に電気工事していただければいいと思いますよ。」
思わず口走ってしまいました。
「あらっ!大工さん、そうなんですか!?それなら助かりますわ!ほんなら大工さん、私は明後日すぎから入らせてもらいますわいね!」
「大工が居たらやりにくいでしょうから、丁度良かったですね!ハハハ~!」
「………。」
大工さん、しばらく来られないんですか?
「え?あ…はい、明後日からちょっと別の現場に行くように言われてますので…。」
「まぁ、その間に電気工事したり設備屋さんが配管の工事をしますので…丁度いいのかも知れませんね…。」
私は苦し紛れの返事をしました。
本当なら、こういう話は元請けの「〇〇リフォーム」さんからあるべきなのでしょうけど~
パニックになって帰ってしまいましたからね…。
「なるほどね!そういうことなら納得出来ます。宜しくお願いしますね。」
こんなやりとりのあった次の日の朝に、冒頭の電話があったのでした。
私はまたKさんに電話をしました。
「はい…?」
面倒臭そうに電話に出たKさんに、私は問いました。
「Kさん、もしかしてここのお客様が怒って明日からの現場に行けなくなった…っていう話になったんですか?」
「いや…それはない。明日からの現場には入ってもらう。予定通りだ。」
「そうですか。分かりました…。」
説明しない監督さんと、そんなのどうでもいいだろうの上等建設のKさん。そしてしゃべり口の大工の私。
「オレにどうしろってんだよ!説明もしないで現場を空けられるっかってんだ!!」
〇〇リフォームの監督さんが、大工が来られなくなると説明したのは、現場を空けて2日後の事でしたね。
大工さん、あと何日かかりますか?
そうだな、あんたの会社で見積もりしたのより1日は短くなりそうだけど…。
もっと早くなりませんか? 私お客様に怒られます。
「……。んなら、大工さんの手が遅いから予定より工期がかかってるって言えばいいんじゃない?」
「……。」
「誰かが悪者になるしかないんだから、しょうがないだろ?」
「それにしても、あんたの会社もいいかげんじゃないか?どこの職人が入るとかの確認もしてなかったんだろ!?」
「私も…忙しかったので…。」
5日程抜けて、帰ってきた現場にKさんが来ました。
「白井さん…お早う。ところでこの現場は、今月中に終わるのかね?」
「えっえええ?そんなに工期が短いんでしたっけ?」
「キッチン屋さんがキッチンを組みに来る日は、ずらせないからね…。もちろん明後日のユニットバス屋さんもね。」
「わぁ~Kさん、そんなに急かしたら失敗しちゃうよ~!」
「私からもお願いします。白井さん、工期守る気ありますよね…?」
「あ~ります、あります!ちゃんと守りますって!!」
と、言いつつ…実はこの月は
長男の卒業式に
三男の卒園式と
集落の農道整備!
御祓川大学のウッドクラフト教室(と、その材料の加工)に、
〇〇保育園の一日リフォーム(1ヶ月前から予約されてた)があって、平日に一日半、日曜は全部がつぶれるのでした。
(ただでさえ、工期が厳しいのに…参ったね~)
私はお客様にお願いしました。
「〇〇さん、大変に申し訳ないのですけど今まで以上に早出、残業をさせて頂きたいのですが…。」
「うちは構いませんよ。だけど大工さんが大変ね~!」
しばらくがむしゃらに働いた2週間でした。
(なんとか乗りきりましたが…疲れのみなぎる枯れ木のような大工が残りました。)
「自分で仕事のとられない大工って、惨めっだねぇ~。」
「うるへぇ~っ!オレだって好き好んで下請けしてるんじゃねえっての!」
「営業してるのかー!?」
「こ、このブログが一応そのつもりなんだっけど…」
「………このブログが!?」
「う…ん…。」
「お前…、もう終わってるな~!?」
「くっ…また、つまらぬものを書きよって…。」