七月の日曜日。
七人家族の、にぎやかな我が家の朝食中に、その話は静かに始まりました。
我が家で一番ヘタレで、一人でお風呂に入られない長男がボソッと言ったんです。
「ねぇ、昨日の夜ね…二階の僕の部屋でコツコツって音がしてん。」
「コツコツ?」
「うん…しばらく続いてたから、うるさくって手で「パンッ!」ってしたら、音止んでん。」
「そ、そりゃお前、雨垂れの音じゃないか?上の屋根の瓦の結露した水が、下の屋根の瓦を叩いた音やろ。」
「窓からじゃなかったもん。」
「どっから?」
「天井…。」
同じ部屋で寝ている10歳の弟は、熟睡してて、全く知らないとの事。
まぁ、あんまり気にするなと、言った後に今度は母がポツリと言いました。
「オレの(母は女でありながら、自分の事をオレと言います。)部屋の天井からも、カサカサって音がする。鳩でもおるんかな?」
「鳩か…なるほど。それなら有り得るな。コツコツって音の犯人も鳩って訳か。」
「ちょっとプルッポーって鳴いてくれたらいいのにな~!」
築40年以上の我が家は、二階の屋根の妻側が結構手抜き工事で、鳩どころか猫さえも入ってこられる隙間だらけのおうちなのです。
「この前見たテレビやと、屋根裏に赤の他人が住んでいたっていう話もあったなぁ~。」なんて冗談を言ってみましたケド、もう誰も聞いてはいませんでした。
その日の夜、私と長男が一階の居間でテレビを見てました(たしか十時頃でした。)。他の家族はとっくに寝室でイビキをかいて寝ている時間。
「ドンッ!」
っと、二階から凄い音がしました。
「ありゃ~、またじいちゃん寝ぼけてベッドから落ちたな。」
長男と、そう言って顔を見合わせました。タマにある事なので、それ程気にも留めず またテレビを見て、二人でガハハと笑っておりました。
未明に…珍しく目が覚めました。私は大抵、朝までグッスリタイプ。 寝ぼけてましたので、まぁいいか…と、また眠ったのでした。
朝。
私 「父ちゃんおはよ。昨日の夜、ベッドから落ちたやろ?」
七十すぎの父は、随分まえから耳が遠くて、会話をする時は声を大きめに話さないと、聞こえません。
静かな朝に、ケンカみたいな会話が始まりました。
父 「え!?いや、全然落ちとらんぞ。」
私 「だって、ドーンってでかい音したぞ!?」
父 「知らん。子供が寝ぼけて壁でも蹴ったんやろ。」
ふ~ん、落ちてないんか…。
母も二階の寝室から降りて来ました。その母に父が言いました。
「お前昨日の夜、二回もトイレ行っとったな?でかい足音で、目が覚めたぞ!」
「え?トイレ?オレ昨日の夜は一回も行っとらんよ。」
え? この時、私と父と母の三人は何かに気が付きました…。
そして、私は思い出したんです。未明に目が覚めた理由を。 寝室の上の屋根の瓦が「ガチャ」っていったんです。その時は瓦が外れて落ちてしまったのかと…。
急いで自分の寝室へ行き、窓を開けて外を見ました。私達夫婦のの寝室は一階にあります。瓦が落ちれば、目の前に転がっているハズなのに…
落ちた瓦なんかありません。
(何かが瓦の上を歩いた音だったんだ…。)
「二階の屋根裏に、何かが居る!」
もう、出勤時間でしたが私はライトを持ち二階の押入れの天井から屋根裏に上がりました。
(長くなりましたので、次回に続きます…。)
※写真画像 ぱくたそフリー画像より