前回のあらすじ
私に似てヘタレな息子(小6)。歯の治療の為に、いつもの歯医者さんに受診したものの、治療を拒否。 信頼関係が出来ていないと判断した私は、嫁さんの勤める病院の奥様方の勧める「〇〇歯科」さんに受診する事に。
しかしそこの先生は、「おじいちゃん先生」だという。果たして……?
「白井様、お待たせしました。どうぞ、診察室にお入り下さい。」
は、はい!
「あ、お父さんは待ち合い室でお待ち下さい。」
は、はい…。
待つこと10分くらい? やはりというべきか、歯科衛生士さんが私を呼びに来た。
「お父さん、診察室にお入り下さい。」
椅子に座る息子の姿と、歯のレントゲンを写し出すモニターが目に入る。 息子に声をかけると、意外にも怯えていない。
「どうや?怖くないか?」 「うん。」
「そうか、良かった。」
と、そこに先生登場。
こ~んな先生を想像してたのに、
な感じの先生でした。え?どこが「おじいちゃん先生?」が、第一印象でした。
「よろしくお願いします先生。」
「こちらこそ。よろしくお願いします。」
と、レントゲンのモニターを見る先生。
「うむ…これは…」「君達はどう思う?」と、女性歯科衛生士さんと、先生(多分娘さん)に声をかける先生。
すると女の先生(多分娘さん)。「歯の土台がありませんね…おそらく膿で満たされていますね。」
「この年齢でこの状態は、お父さん 非常にレアなケースです。」
「そうなんですか?」
「50歳以上の方なら、ままあるんですが…。今、〇〇君の歯は3本の根のうちの、1本だけがかろうじて骨にくっついているだけの状態です。」
「へぇ、そうなんですか…。それは大変だ…。どうか治して下さい。よろしくお願いします!」
大丈夫ですよ。完治までには何年かかかるかもしれませんけど、治りますよ。
ダンディー先生 「白井さん、息子さんのケースは本当にレアなんです。治療内容を学会に発表したいのですが宜しいでしょうか?」
「ええ、どうぞお役にたてるのなら…。」
そんな会話の後、息子は歯に穴を開けて膿を出す治療を受けました。
治療を終えて診察室を出てきた息子は、晴々とした顔をしてました。
「お父さん、〇〇君は頑張りましたよ。」と、ダンディー先生。そのマスクごしの笑顔は、いつか見た映画俳優みたいに見えました。
なんて、イイ雰囲気の歯医者さんなんだろう…。
私は決めました。来週の治療の時、三男(6才)も連れて来ようと…。
一週間後。
1本だけが酷い虫歯の三男の「初~!歯医者さん」…。
「ちょっとチクンってするだけだよね?」
「そうや、そして虫歯の歯をピッって取るんや。」
待ち合い室で、そんな会話をしていましたら隣の女性が笑いました。そしてこう言ったんです。
「ウフフ、大丈夫よ…ここの先生はとっても優しいから。」
目のやり場に困る程の短いスカートの40 歳過ぎと思われるその女性は、そう言うと向こうのテレビに目をやりました。
その横顔には笑みさえこぼれておりました。
私は気が付きました。
子供に人気の歯医者さんは…
女性にも人気がある…!!
そして私は決めました。
「遠いけど…ずっとこの歯医者さんに通っちゃお~!」と…。
※写真画像 ぱくたそフリー画像より